THE UPDATE

2026年6月4日|22分

田んぼと土壌の不思議 with 土壌学者 藤井一至教授 Part1

ゲスト: 藤井一至(福島国際研究教育機構 土壌学者)

田んぼと土壌の不思議 with 土壌学者 藤井一至教授 Part1

『土と生命の46億年史』の著者である土壌学者の藤井一至先生に、田んぼや土の不思議をお聞きします。福島国際研究教育機構・土壌ホメオスタシス研究ユニットリーダー(元国立研究開発法人森林研究・整備機構・森林総合研究所主任研究員)。

とめどなくあふれる土壌トークにぜひ引き込まれてください!

この回の内容

ポッドキャスト『The Update』(案内役:リバネスナレッジ・川崎佑治)に、福島国際研究教育機構・土壌ホメオスタシス研究ユニットリーダーで土壌学者の藤井一至が登場するシリーズ第1部。冒頭では著書『土と生命の46億年史——土と進化の謎に迫る』(ブルーバックス)が8万部に達したベストセラーであること、「土壌のロックスター」と呼ばれる藤井が自らを「ソイル(土)」と称する軽妙なやり取りを紹介する。読者からは「会社で叱られたことも46億年スケールで見れば些細に思える」といった感想が届くこと、日経新聞のエッセイでは専門的な内容より失敗談やユーモアが好まれることなど、執筆と発信への姿勢を語る。後半は研究テーマの変遷が主題で、熱帯雨林や北極圏の永久凍土(黒トウヒが育つツンドラ)での森林研究を経て、人為的で応用的な生態系である「田んぼ」へ関心が移った経緯を説明。田んぼは湛水すると2週間ほどで酸素が欠乏し、35億年前に優勢だったメタン菌など嫌気性微生物が有利になること、鉄の溶出に伴いリン酸が可溶化してビビアナイト(鉄リン酸塩鉱物)が生成され稲に栄養が届く仕組み、脱窒菌から硫酸還元菌・メタン菌へと微生物の主役が交代しながら栄養循環を生むことを解説する。さらに田んぼが2000年以上連作できる恒常性(ホメオスタシス)を持つ点を、数年で連作障害が起きる畑と対比。日本の水田は東南アジアの大河デルタと異なり、卑弥呼の時代から武田信玄の信玄堤、豊臣秀吉・徳川家康の利根川の付け替えまで、歴史上の人物が土木事業として営々と開拓し、総延長は地球から月までの距離に相当する40万kmに及ぶと述べる。

この回でわかること

土壌学者・藤井一至とはどんな人物か?

福島国際研究教育機構の土壌ホメオスタシス研究ユニットリーダー。著書『土と生命の46億年史——土と進化の謎に迫る』(ブルーバックス)は8万部に達したベストセラーで、「土壌のロックスター」と呼ばれる。読者からは「会社で叱られたことも46億年スケールで見れば些細に思える」といった感想が届くという。

なぜ森林研究から田んぼ研究に移ったのか?

熱帯雨林や北極圏の永久凍土(黒トウヒが育つツンドラ)での森林研究を経て、人為的で応用的な生態系である「田んぼ」へ関心が移ったと説明される。

田んぼに水を張ると土の中で何が起きるのか?

湛水すると2週間ほどで酸素が欠乏し、35億年前に優勢だったメタン菌など嫌気性微生物が有利になる。鉄の溶出に伴いリン酸が可溶化してビビアナイト(鉄リン酸塩鉱物)が生成され、稲に栄養が届く。脱窒菌から硫酸還元菌・メタン菌へと微生物の主役が交代しながら栄養循環が生まれる。

なぜ田んぼは2000年以上連作できるのか?

田んぼには恒常性(ホメオスタシス)があるためで、数年で連作障害が起きる畑とは対照的である。

日本の水田はどうやって作られたのか?

東南アジアの大河デルタとは異なり、卑弥呼の時代から武田信玄の信玄堤、豊臣秀吉・徳川家康の利根川の付け替えまで、歴史上の人物が土木事業として営々と開拓してきた。用水路の総延長は地球から月までの距離に相当する40万kmに及ぶ。

話したトピック

  • 藤井一至の紹介と著書『土と生命の46億年史』
  • 土壌ホメオスタシス(恒常性)という概念
  • ベストセラー化と読者の反響
  • 日経新聞エッセイと執筆・発信の姿勢
  • 森林研究から田んぼ研究への転換
  • 熱帯雨林・北極圏永久凍土での研究
  • 湛水による酸素欠乏と嫌気性微生物の遷移
  • リン酸の可溶化とビビアナイト生成
  • 田んぼの連作可能性と畑の連作障害の対比
  • 日本の水田開拓史と土木事業

この回の発言から

僕はロックじゃないからね。ソイルだからね
— 藤井一至
会社でなんか叱られたこととかどうでもいいと思えた、46億年スケールだとみたいな
— 藤井一至
せめて自分が面白いぞって思って、それをキャッチして面白いって言ってくる人に届けばいいかなっていう、割り切りはありますよね
— 藤井一至
田んぼって水張るとですね、酸素がなくなって、だいたい2週間ぐらいで、35億年前ぐらいに地球に多かったであろうメタン菌とかが増えてくるんで
— 藤井一至
田んぼってですね、2000年以上ずっと収穫できてるわけですよね。毎年毎年。それってやっぱりおかしい。畑やってると数年で同じもの取れなくなりますよ
— 藤井一至
あれはほとんど新田開発してた土木業者のリーダーなんですよね
— 藤井一至

このシリーズのエピソード

田んぼと土壌の不思議 with 土壌学者 藤井一至教授