THE UPDATE

2026年6月18日|20分

田んぼと土壌の不思議 with 土壌学者 藤井一至教授 Part3

ゲスト: 藤井一至(福島国際研究教育機構 土壌学者)

田んぼと土壌の不思議 with 土壌学者 藤井一至教授 Part3

『土と生命の46億年史』の著者である土壌学者の藤井一至先生に、田んぼや土の不思議をお聞きします。福島国際研究教育機構・土壌ホメオスタシス研究ユニットリーダー(元国立研究開発法人森林研究・整備機構・森林総合研究所主任研究員)。

  • 未だに「土」を製造できない
  • コンポストは土をかければいい
  • うじ虫が有機物を分解するのも酵母菌とセット
  • 水槽の中に入れるソイルで水が綺麗になるのは
  • いつも微生物がいる
  • 「環境を整える」という連鎖
  • 同じ岩石からスタートしたのに違う土になる
  • 土によって食文化も違ってくる
  • 微生物が定着しないと「土」ではない
  • NASAとの「土」の定義の議論とは

この回の内容

シリーズ第3部では、案内役の川崎佑治と土壌学者・藤井一至が、微生物と土の生成メカニズム、そして「土とは何か」という定義の問題を語り合う。冒頭は前部を受けて、土は大さじ一杯に約1万種の微生物が共存し分業して落ち葉を分解するため人工製造できないという話から、コンポストの仕組みへ。土を混ぜれば微生物が入り、ハエが運ぶコウボ(酵母)をウジムシが食べることで分解が加速すると説明する。有用微生物の投入は土着微生物が最強のため再現性が取りにくいこと、閉鎖環境のコンポストでは効きやすいことを指摘。川崎が趣味のアクアリウムのソイル(焼き固めた粒状の土)で水が澄む現象を尋ねると、藤井はスメクタイト(猫砂と同成分)の物理的・化学的吸着と微生物の働きが関与すると答える。中盤は土の成り立ちが主題で、岩石が酸性雨で風化・再結晶して粘土が生じること、火山灰の跡地では溶けた鉄を利用して窒素を固定する細菌がまず有利になり、窒素が増えると他の微生物や植物が現れて一次遷移・二次遷移が進み最後に森になること、植物や微生物が酸を出して岩石を溶かし栄養を得る営みが土の生成と表裏一体であることを解説する。山にはバーミキュライトやカオリナイト、田んぼなど低湿地にはスメクタイトが多いという地形による粘土の違いにも触れる。終盤は定義論で、土壌学では「生物活動があること」を前提とし、岩石ゾーンと生物ゾーンが交わった場所を土と呼ぶこと、殺菌した土は「土だったもの」でしかないことを論じる。一方、月や火星を扱うNASAからの要請で定義が拡張され、生物がいなくても岩盤と異なる物質に変化していれば土と認めるようになったこと(太陽光による膨張収縮で岩石がバラバラになりレゴリスとなる過程)を紹介し、アームストロング船長が月面を「パウダー」と評したエピソードに至る。

この回でわかること

コンポストはどういう仕組みで分解が進むのか?

土を混ぜれば微生物が入り、ハエが運ぶコウボ(酵母)をウジムシが食べることで分解が加速する。有用微生物の投入は土着微生物が最強のため再現性が取りにくいが、閉鎖環境のコンポストでは効きやすいと指摘される。

アクアリウムのソイルを入れると水が澄むのはなぜか?

藤井一至は、スメクタイト(猫砂と同成分)の物理的・化学的な吸着と、微生物の働きが関与すると答える。

土はどのようにできるのか?

岩石が酸性雨で風化・再結晶して粘土が生じる。火山灰の跡地では溶けた鉄を利用して窒素を固定する細菌がまず有利になり、窒素が増えると他の微生物や植物が現れて一次遷移・二次遷移が進み、最後に森になる。植物や微生物が酸を出して岩石を溶かし栄養を得る営みが、土の生成と表裏一体になっている。山にはバーミキュライトやカオリナイト、田んぼなど低湿地にはスメクタイトが多い。

土壌学では何を「土」と呼ぶのか?

「生物活動があること」を前提とし、岩石ゾーンと生物ゾーンが交わった場所を土と呼ぶ。殺菌した土は「土だったもの」でしかないと論じられる。

月や火星に土はあるのか?

NASAからの要請で定義が拡張され、生物がいなくても岩盤と異なる物質に変化していれば土と認めるようになった。太陽光による膨張収縮で岩石がバラバラになりレゴリスとなる過程がそれにあたり、アームストロング船長は月面を「パウダー」と評した。

話したトピック

  • 土の微生物の多様性と人工製造の困難
  • コンポストの仕組み(ハエ・ウジムシ・酵母)
  • 有用微生物の再現性と土着微生物
  • アクアリウムのソイルと吸着(スメクタイト・猫砂)
  • 岩石の風化と粘土の生成
  • 鉄を利用する窒素固定細菌と一次遷移・二次遷移
  • 植物・微生物が岩石を溶かす営みと土の生成
  • 地形による粘土鉱物の違い
  • 土の定義と生物活動の前提
  • NASAによる定義拡張と月面のレゴリス

この回の発言から

だいたい微生物はその今土着のやつらが最強なんで、そこに割って入ることは難しい
— 藤井一至
人工的に土壌を作ることはできなくても、加速することはできるんじゃないかっていう。それが一つ研究の対象になって
— 藤井一至
土を作ることっていうのは、植物と微生物が生きることのもう同じ逆の面で、表裏一体っていう感じで
— 藤井一至
岩石も土じゃないんですけど、そこに根っこが入ったり微生物が定着した瞬間、それが土なんですよ
— 藤井一至
ちょっと前まで土だったものとしか言いようがないですね
— 藤井一至
土って言葉は、お前ら地球の土の研究者のためだけにある言葉じゃないだろうよっていう
— 藤井一至

この回から生まれた記事

  • 土とは何か?

    土壌学では何を「土」と呼ぶのか。岩石と生物が交わった場所という定義から、殺菌した土が土でなくなる理由、そして月のレゴリスをNASAが土と呼ぶまでを解説。

このシリーズのエピソード

田んぼと土壌の不思議 with 土壌学者 藤井一至教授