自分の便が「良い便」なのかどうかを、人に聞くのは難しい。比べる相手もいなければ、そもそも何を基準にすればいいのかもわからない。
その基準として世界中の医療現場で使われているのが、ブリストルスケールです。便の形を7段階に分けるだけのシンプルな指標ですが、これを知っていると、自分のお腹で今なにが起きているのかを毎日読み取れるようになります。
Podcast『The Update』では、株式会社メタジェンで腸内環境を研究する伊藤正樹さんを迎え、うんこから何がわかるのかを掘り下げました。この記事では、その回で語られた「良いうんこ」の見方を軸に、ブリストルスケールの読み方を整理します。
ブリストルスケールとは
ブリストルスケールは、1997年に英国ブリストルのスティーブン・ルイスとケン・ヒートンが学術誌 Scandinavian Journal of Gastroenterology で発表した、便の形状を7段階に分類する指標です。正式にはブリストル便形状スケール(Bristol Stool Form Scale)と呼ばれ、消化管の通過時間の目安として国際的に使われています。
ブリストルスケールという、便を7段階の形状に分けて、コロコロからビシャビシャまで
— 伊藤正樹さん(Podcast『The Update』「うんこから健康がわかる?」Part2)
7つのタイプは次のように分かれます。
- タイプ1 — 硬くて小さな、木の実のようなコロコロした便。排便に苦労する
- タイプ2 — 短いソーセージ状で、表面がゴツゴツと硬い便
- タイプ3 — ソーセージ状だが、表面にひび割れがある便
- タイプ4 — 表面がなめらかで柔らかい、ソーセージ状またはとぐろを巻いた蛇のような便
- タイプ5 — はっきりした境目のある柔らかい半固形の便。楽に排出できる
- タイプ6 — 境界がほぐれた、ふにゃふにゃの不定形な便
- タイプ7 — 固形物を含まない、水のような便
このうちタイプ1〜2は便秘傾向、タイプ3〜5が正常の範囲、タイプ6〜7は下痢傾向とされます。理想はタイプ4です。番号が小さいほど腸内に留まっていた時間が長く、大きいほど短かったことを意味します。
研究者が見ている「良いうんこ」の条件
形の分類とは別に、伊藤さんは良い便の条件として、長い・太い・食物残渣が少ない・表面が滑らかという4点を挙げています。タイプ4を、より具体的な観察ポイントに分解したものだと考えるとわかりやすい。
そして頻度が加わります。
消化吸収、発酵吸収、この4段階のフェーズをきちんと踏むことができれば、いわゆる良いうんこ、バナナ状のうんこが1日に1回ないし2回、コンスタントに出てくる状態になります
— 伊藤正樹さん(Podcast『The Update』「うんこから健康がわかる?」Part2)
ここで言われている4段階とは、消化管が順番にこなしている仕事のことです。まず胃と小腸で消化し、栄養を吸収する。続いて大腸で腸内細菌が食物繊維を発酵させ、そこで生まれたものをふたたび吸収する。この4つが揃って初めて、バナナ状の便が出てきます。
つまりタイプ4の便は、消化管と腸内細菌が滞りなく働いた結果として出てくるものです。形が崩れているということは、この4段階のどこかが速すぎるか遅すぎるということになります。
太さと色は、人と比べない
便を評価するときに多くの人がやってしまうのが、他人との比較です。しかし太さについては、比べる意味がありません。
便の太さは消化管そのものの太さで決まります。身長に個人差があるのと同じで、生まれつき太い人もいれば細い人もいる。
なので人と比べるとですね、わけわかんなくなっちゃう
— 伊藤正樹さん(Podcast『The Update』「うんこから健康がわかる?」Part2)
色も同様です。黄色っぽい人もいれば、黒みや赤みが強い人もいて、個人差がかなり大きい。
代わりに使えるのが**「昨日の自分」を基準にする**やり方です。2週間ほど自分の便を見続けると、自分にとっての平常がわかってきます。その平常からどちらにずれたのかを見れば、食べたものや生活のどこが効いたのかを推測できます。絶対値ではなく変化を見る、ということです。
コロコロ便のとき、腸の中で起きていること
タイプ1のコロコロした便は、単に「水分が足りない」だけの話ではありません。
便が腸内に長く留まると、消化管の4段階のうち発酵と吸収の時間が長くなりすぎます。すると腸内細菌の餌である食物繊維がだんだん消費されて減っていき、最後には枯渇していく。餌が尽きた腸内細菌は働けず、便は体積を保てないまま小さく硬くなります。
やっかいなのは、これが循環することです。便が硬くて出にくいから長く留まる、長く留まるから食物繊維がさらに減る、という繰り返しになります。コロコロ便が続くときは、水分だけでなく、腸に届く食物繊維そのものが足りていない可能性を疑ったほうがいい。
形を戻すための食物繊維の取り方
食物繊維の摂取目安は、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の目標量で、成人男性が1日20〜22グラム以上、成人女性が17〜18グラム以上(いずれも年齢による)。生活習慣病の予防という観点では1日25グラム以上が理想とされており、目標量はその理想と日本人の実際の摂取量の中間に置かれています。ただし取り方には差があります。
やっぱり根菜、豆、穀物由来のものを、様々なものをたくさん取るほうが、同じ重量のパウダーのものよりも腸内環境に良い
— 伊藤正樹さん(Podcast『The Update』「うんこから健康がわかる?」Part2)
腸内細菌はおよそ1,000種類いるとされ、それぞれ得意な餌が違います。単一のパウダーでは一部の菌しか働かせられませんが、根菜・豆・穀物・海藻と種類を散らすことで、より多くの菌に仕事が回ります。同じ量を取っても、中身の多様性で結果が変わるということです。
なお、野菜を食べることと食物繊維を取ることはイコールではありません。緑黄色野菜を勧める話は、多くの場合カロテンやミネラルを取る文脈のものです。食物繊維を狙うなら、穀物や海藻の比重を上げるほうが効率がいい。生野菜を食べるとお腹が張るという人は、ゆっくり火を通したものに置き換える手もあります。
まず2週間、自分の便を見る
ブリストルスケールの価値は、診断ではなく観察の言語を持てることにあります。「なんとなく調子が悪い」ではなく「今週はタイプ2が続いている」と言えるようになると、原因を食事や睡眠から探しにいけるようになる。
伊藤さんが繰り返していたのは、正解から外れていても時間をかければ戻していけるということでした。まずは2週間、自分の平常を知るところから始まります。